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涼宮ハルヒの憂鬱 第13話

第13話「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ」

朝倉涼子のマンションを尋ねに行くハルヒとキョン、「女子と肩を並べて下校する」ささやかな願望が叶いつつも嬉しくないと考えるキョン。ここで初めて気が付いた、キョンとハルヒはやはり出会うべくして出会ったのだろう。その理由は何のことは無い「キョンが憂鬱で退屈だった」からだ。
思えば第2話「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅰ」の冒頭でキョンは灰色の世界をバックに「サンタクロースなど最初から信じていなかった」と語りさらには中学を卒業する頃には「(宇宙人や未来人が)でもちょっとは居て欲しい」という可能性すら捨ててしまっている。しかも、「女子と肩を並べて下校する」事を夢見つつもかといって学年で1・2を争う美少女朝倉涼子にアタックする訳でもなく、比較的気安い関係に有るモデル並みの容姿を持つ先輩みくる・鶴屋さんと下校するでもなく、中身はともかく容姿は捨てたものじゃない(よね?)読書少女長門と相互理解を深めるでもなく、キョンは嫌々ながらハルヒとSOS団に付き合ってるだけの生活をダラダラと過ごしている。客観的に言えば高校に入学したばかりの15~16歳の少年にしては異常なほどキョンは斜めに構えた性格をしている。少なくともアニメ版の中でキョンは女性陣の誰か一人でも「もしかして俺に惚れたりして」なんて妄想を1度も描いていない。この年回りの男ならまず間違いなくするであろう妄想・想像をキョンはしない。それは自分の様な何の取り得も無い普通の奴にあんな美少女が惚れる訳が無いと「常識的に」知っているからである。
「常識」という1本の柱を天高く建ててその周りだけをくるくる回って「非常識」を振り落としていくのがキョンの生き方だ。一方のハルヒは小学生の時に見た野球場一杯の人間という経験から心の中に「普遍的」という壁があり自分はその中で暮らしている蛙だと言う事に気付く。どうしたら「普遍的」という名の壁の外へ抜け出せるのか、その答えは「非常識」な出来事を積み重ねて積み重ねて壁よりも高くするということだ。そのために壁の中をくるくる回って「非常識」を回収している。二人の生き方は背中合わせ、見ようによってはそっくりである。このそっくりな生き方をする不器用なパートナーを見つけた事でハルヒはささやかながら現実世界に希望を見出し始めた。だが、SOS団を作っても不思議なことは起きないしキョンはいつまでたってもやる気が無いし、その上自分の知らない内になにやら長門と通じ合っている。思い切って打ち明けた自分の行動原理の根源話ですら思わしい反応をキョンから引き出す事が出来なかった。朝倉の足取りも途絶え文字通り路頭に迷うハルヒは閉鎖空間を生み出す以外何も出来ないただの少女だった。ハルヒが本当に求めていたのは宇宙人や未来人ではなく自分の孤独を共有してくれるパートナーだったのかもしれない。

大体予想通りだが今回はあまり動きの無い話で動画的にも脚本・演出的にも前回ほど飛び抜けた物は無い。だがハルヒの野球場での体験談のくだりはさすがだと思った。当然ながらハルヒの行動原理に意味など持たせなくても視聴者(読者)は作品を楽しむことはできるのだがここまで納得の行く理由を持ち出せた事がこの作品の地力と評価しておこう。
このくだりに関しては原作の功績なのだが個人的にはアニメとしての表現もなかなか面白かったと思う。回想シーン、このアニメしては珍しくしおらしい音楽とか小さいながら瞬きや腕組みをしたり机に座るときに髪を掻き揚げたり引き出しから電卓を出したり女の子らしく片方づつブランコの鎖を掴んで座る仕草などとにかく手を抜かない。冗長になりがちな長台詞をいかに紛らわしつつ雰囲気を壊さないかをギリギリのバランスとラインで行っている。
このシーン後「待ってるだけの女じゃないことを世界に訴えようと思ったの」という台詞が個人的に面白い。「友達に」とか「自分の周囲に」じゃなくていきなり「世界」が相手ってのが面白い。大抵こういう時に普通の人間が取る行動はでかい事を言いつつやる事は「盗んだバイクで走り出す」とかケツの穴の小さい行動が関の山なのだがハルヒは違う。いきなり「世界」。その後のキョンの台詞も面白い。電車が通ってその間に見つめ合ったり思索に入るのはアニメやドラマではテンプレと化しているのだがそのシーンのキョンの心理をわざわざキョン自身に語らせる所が面白い。視聴者の好きに読ませるシーンが有ったかと思うと逆に詳細に語らせる事によってキョンの心理を深く伝える、要はメリハリが利いてると言う事。ハルヒの絶望とは入れ違いに出会ってからここまでで一番キョンがハルヒに共感しているという皮肉な場面設定もいい。
後半は突っ込み所はあまりないけど背景がまたすごい。高速道路で流れるビル郡やらちゃんと揺れて映る高速の壁の模様とか良くここまで描く物だと感心。普通こういうシーンはただ横方向に流れる絵だけを描く物だが道路のわずかな凹凸により視点はぶれるし建てられた壁自体も1ミリの狂いも無く立っている訳ではない。それをちゃんと表現する為に縦揺れを入れて描いてるのがすごい。タクシーの運転手は料金所のカットでチラッと見えるが「孤島症候群」の荒川さんらしいことが分かる。古泉の話も長くてアニメとしては退屈だけどSFの前振りとしては普通に楽しめる。逆に神人との戦いはあっさり過ぎかな、あまりくどく描くべきシーンでは無いけど。ただ、このシーンも背景の手間を考えるとクラクラするほど街の絵が細かいなぁ。
今回はみくるちゃんは出番無しで空気状態、長門は台詞一言だけ。長門の中の人がこの一言でいくら貰ったのか気になる。しかしコンビ袋提げてる長門とか無言で首を振ったりこっくり頷く長門は可愛いなぁ。

追記、同じように世界に対し憂鬱な二人だがキョンが普通人代表でハルヒが恵まれた人代表という対比構造でもある。キョンと比較して容姿も頭脳も運動能力も何もかもが格段優れているハルヒですら世界の前では大した効力を持たない。大きな力を持っていても出来ないことは有るし逆にキョンが鍵となるように小さな力でどうにでもなる事も有る、というメッセージであろうか。

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